「可愛いい子には旅をさせよ」 支部顧問 吉村 久夫
寄稿
このほど佐賀育英会の松濤学舎の評議員会議長を辞任しました。気がつけばもう9年間も居座っていました。辞任理由は高齢と健康です。辞任してみて、残念だったことを一つ思い出しました。在任中に小城高から誰も入寮希望者が無かったことです。
私の在任中の常務理事舎監は久保先生でした。久保先生は私の小城高1年先輩で、しかも小城高校長を経験された方でした。2人で時々「小城高から入寮希望者がありませんね」と嘆いたものでした。
上京された小城高校長先生に「誰かよこして下さいよ」と嘆願したものでした。そういう私も実は松濤学舎の卒業生ではありません。校長先生の推薦状が必要だ第9号 黄城会関東支部会報 平成30年8月26日寄稿と聞いて、尻込みした一人でした。しかし、当時は小城高からの入寮者がいました。名前を言えば「おう、あの人か」とすぐ名前が浮かんでくる秀才たちです。2年ほど前のことです。入寮希望者の中に小城の岩松の人がいました。驚いて書類を見ると、私が少年の頃、親しくさせてもらったお寺の住職のお孫さんではありませんか。東大理科希望とのことでした。ところが、高校は好學館でした。
彼はいま、東大に進学して、もちろん寮生の一人として、元気に東京生活で勉学その他いろいろな経験を積んでいると聞きます。結構なことです。小城高の校長先生たちの説明によると、最近は上京する卒業生自体が少ないということです。また親ごさんも子供たちを手放したくないとのことです。少子高齢化の時代です。家業を継いでもらいたいでしょうし、手元に置きたい気持ちはよくわかります。
それにネットの時代です。いながらにして情報が入ってきます。米国に留学しないでも、ハーバード大学の講義が聴ける時代」です。金をかけて東京に出て、危険な目にあう必要はさらさらありません。よくわかります。
しかしです。昔から「可愛い子には旅をさせろというじゃありませんか。人の成長は同じ釜の飯を何杯食べたかで決まるとも言います。昨今は人工知能の時代で、人間性や直観力を豊かにするため、討論とか寮生活の効用が見直されてもいます。
明治維新が成功したのは、江戸時代の教育のおかげでした。寺子屋で学問の基礎を習い、塾や寮で生徒同士が議論して切磋琢磨したおかげでした。なんとか、上京して世間を広く自分の目で見る機会を増やせないものでしょうか。松濤学舎を辞任したいまでも、この点だけが心残りです。
【編集後記】
今年もたくさんの原稿をいただきました。きちんと締め切りを守っていたただき、感謝を申し上げます。支部総会に顔は出さないものの、会費を納めている方がいます。そんな方に声掛けすることもこれから必要だと思います。(田)
物故者 【謹んでお悔やみを申し
上げます。】
➤ K03 大坪満寿雄様(芦刈・三条)佐倉市鏑木町
➤ K03 森永隆様(小城・岡町)
➤ K07 古館博國様(晴田寒気)浦安市富岡
➤ K07 藤本・市川和子様(北多久)横浜市港北区
➤ K17 高塚正彦様(三日月・芦田)日高市中鹿山
➤ K17 新居崎信也様(小城・池の上)横浜市戸塚区
➤ K20 橋間方起様(芦刈・西道免)印西市高花)
関東黄城 会報 - 平成30年8月26日 PDF版